レンズ別ベストショット企画、第七弾はVoigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5です。
購入後まだ10か月と、かなり早い段階なのですが、フォトヨドバシを含めあまりこのレンズの記事が出てこないので(掲載されました 2020/02追記)、それなりに需要はあるのかなと判断してまとめてみることにしました。
[目次]
はじめに
Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5(E-mount)は2018年の12月に発売されました。当初、2018年8月の発売が予定されており夏休みに使うことを楽しみにしていたのですが、発売が延期されてやきもきさせられました。
[公式HP] アポクロマート設計の等倍マクロ | MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5
APO-LANTHAR(アポランター)とは、フォクトレンダーのレンズの中でも特に高性能な製品に与えられる称号。このレンズの先端にはRGBの差し色が配されており、これはBESSAⅡを始めとするAPO-LANTHARに施されていた装飾へのオマージュなのだそうです。公式ホームページの説明を引用しておきます。
APO-LANTHAR(アポランター)とは、フォクトレンダーのレンズの中でも特に高性能な製品に与えられる称号です。アポクロマート設計による傑出した結像性能と描写の美しさから写真家の心を魅了してきた伝説のレンズであるAPO-LANTHAR が誕生したのは1954年。その出自は120年ほど前まで遡れます。
語源の“APO”とは、アポクロマート設計されたレンズであることを示します。光の3原色であるRGBそれぞれ異なる波長(振動数)に起因する軸上色収差を限りなくゼロに近づけることにより、高次元の色再現度が得られることを特長とします。1935年に誕生したカラーフィルムの普及に伴い、白黒フィルムよりも忠実に光を捉える必要性が生じてきたこともAPO-LANTHARが開発された理由の一つです。
ソニーEマウントの電子接点搭載で、Exif情報反映・カメラボディ側5軸手ブレ補正・フォーカスリングの操作によるファインダー拡大表示などに対応していますが、フォーカシングはマニュアルです。レンズの重量は771g。塊感があり、ずしりと重いですが、一日持ち歩くことが苦になるほどではないサイズです。ピントリングを回すときの感触は、さすがのフォクトレンダー品質。ただ、マクロレンズならではの正確なピント合わせのため、最短から無限遠までにはピントリングを2回転ほど延々と繰り出す必要があります。人によっては気になるかもしれません。
購入に至るまで
このレンズの購入に至るにはいくつかの要因がありました。箇条書きしてみます。
1)中望遠が好き。
2)マクロレンズを1本も持っていなかった。
3)MACRO APO-LANTHAR 65mm F2の存在。
4)SIGMA MACRO 105mm f2.8 EX DG OS HSMの存在。
1)と2)については特に説明は必要ないでしょう。3)のMACRO APO-LANTHAR 65mm F2については、フォトヨドバシのレビューを見てノックアウトされました。
このレビュー見て、欲しくならない人っている??
ただ、この時点で私は58mmと85mmのレンズを所有していましたので、焦点距離的に本当に必要なのか?という観点で、熟考モードに入っていました。
そんな折、出会ったレンズが、4)の SIGMA MACRO 105mm f2.8 EX DG OS HSM。斧田小夜さん (id:wonodas)の下記エントリーを読んで、魅了されてしまいました。
素敵な中望遠スナップを見せられた後に、さらっと紫陽花のマクロ。この美しい流れが一本のレンズで成立するの、めちゃ良い。
そしてこれ。
この作例見て、欲しくならない人っている??
というわけで、もうお分かりだと思います。
1) + 2) + 3) + 4) + E-mount の解は、Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5、となるわけです。
それでは写真を。
My best shots
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/500 ISO320
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.8 1/160 ISO100
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/320 ISO100
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/5.0 1/1600 ISO100
2018/12 七里ガ浜 / 神奈川県鎌倉市
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/125 ISO200
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/4.5 1/250 ISO100
背景からすっとユリカモメの白い羽毛が全く違和感なく立ち上がります。ほとんど濁りがない。以前に別のレンズで撮影したユリカモメの写真と比較すると差は歴然でした。
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/6.3 1/125 ISO1000
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/8.0 1/640 ISO400
この綿毛の描写って何気にスゴイことだと思う。
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/1250 ISO100
中望遠の画面整理力にフォーカス面のクリアさが加わることにより、シンプルな構図がより引き立つ気がします。
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/500 ISO100
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/1250 ISO100
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/160 ISO100
収差が極めて少ないので、オーバー気味のマクロなんかは得意。ボケの雰囲気も良いです。
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/160 ISO100
2019/04 見沼氷川公園 / 埼玉県さいたま市
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/4.5 1/640 ISO120
このレンズ、近接時の水の質感描写がめちゃめちゃ良いです。表面張力感がすごい。
2019/04 見沼氷川公園 / 埼玉県さいたま市
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/250 ISO100
2019/04 神奈川県横浜市
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.8 1/1250 ISO100
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/1250 ISO2000
花撮りには少し硬すぎることも多いです(このショットは問題ないですが)。そんな時にはポストプロセスで少し緩めてやると良いようです。
2019/05 実家
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/13 1/400 ISO2500
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/320 ISO100
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/1600 ISO100
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/5.6 1/320 ISO100
2019/06 七里ガ浜 / 神奈川鎌倉市
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/5000 ISO100
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/200 ISO100
2019/06 一条恵観山荘 / 神奈川鎌倉市
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.8 1/320 ISO100
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.8 1/500 ISO100
この立体感、すごくないですか?
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/6.3 1/125 ISO1000
このレンズで撮影した写真の中で、もっとも気に入っている一枚。あとほんの数mm、フォーカスが手前だったら完璧だったんだけど。(手持ちだとほぼアウトオブコントロール)
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/4.5 1/125 ISO1250
Sony ILCE-7S Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/11 1/125 ISO1250
最短撮影距離付近では、F11まで絞ってもカナブンの眼にしかピントが合いません。呼吸するだけでピントがズレてしまいます。手持ちがメインの方は、マクロ用途には65mmの方がベターかもしれません。
2019/07 神奈川藤沢市
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.8 1/1250 ISO100
2019/08 真名瀬港 / 神奈川県葉山市
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/3.5 1/8000 ISO100
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/3200 ISO100
逆光耐性は問題ないと思います。
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/14 1/640 ISO3200
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/6.3 1/125 ISO3200
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/6.3 1/125 ISO3200
こちらをクリックしてみてください。
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/5.0 1/125 ISO800
優れたフォーカス面の解像感のおかげで、訴求ポイントに視線がすっと引き付けられます。
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.8 1/500 ISO800
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/5000 ISO100
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/5000 ISO100
なんでしょう、このレンズ、モノクロも積極的に試したくなります。
Sony ILCE-7RM2 Voigtlander MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5 f/2.5 1/640 ISO100
開放ではそれなりの周辺減光あり。
使用してみて
表現の幅が広がったなと感じます。中望遠レンズとしての特徴に加え等倍マクロまで撮れるというのは、海岸やネイチャーではかなりの無敵感があります。フラフラ散歩していて、ふと足元に魅力的な被写体を見つけた時に、スッとマクロスナップを撮る。こんな芸当は、今まではできなかったことです。無機質な被写体にも強いので、洋館撮影なんかでも活躍します。シャープネスよし、ボケもよしで、想像以上に活用できる幅は広いです。性能には絶対的な信頼をおけるレンズですし、ほぼ必携のレンズになりました。
その他のインプレッションについては、これまでのエントリーで触れてきたものと今でも変わっていません。手抜きですがコピペしておきます。
MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5を手に入れて、約1か月がたちます。現在の率直な感想は、ものすごくいいレンズだけど使いこなすのも難しいということ。
理由の一点目は、近距離ーマクロ域では手振れにものすごーく気を遣うという点です。α7Sには手振れ補正がないこともあり、今のところ手振れショットを量産しています(苦笑)。それと開放でのピントピークの把握しづらさ。なんていうのかな、EVF中で画面を拡大してピントリングを回していくと、気が付いたらピントピークを通り過ぎているんです。Nokton 40/1.2なんかだと、ピントリングを回していくとココ!!っていう感動的なポイントがあるんですが、このレンズはその感覚が薄い(気がする)。普段使わないピーキング機能を使ってみたりもしましたが、あまり役に立ちませんでした。そして何とかピントピークを探りあてても、ちょっと体が前後すると外れてしまう。ムズイです...。まあでもこの辺りは鍛錬あるのみですね。
もうひとつ思うのは、たぶん収差を徹底的に排除した結果だと思うのですが、「味が描写に介在しない」というのは確かに感じています。例えばNokton 40/1.2なんかだと、日常を非日常に変えてくれる魔法のスパイスみたいなのが多少なりともあるわけですが、このレンズにはそれがない。ただ、だからといってつまらないというわけではないのです。例えば水面の質感描写。徹底的にリアリティを表現する結果、感動的な描写になります。
MACRO APO-LANTHAR 110mm F2.5、今のところ打率がやや低いです。原因は、ピンボケと手ブレ。特に(マクロ撮影とまではいかないまでも)被写体との距離が近い時は、フォーカスした後の微妙な身体の前後の動きでもピント面を外してしまいますし、手ブレにもシビアです。日の差さない森の中なんかは手ブレ補正のないα7Sではきっつい。きっちり構えて息を止めてシャッターを切らないと、ブレてしまいます。Sモードに高めのシャッタースピードを設定しておいて、シャッタースピードを稼ぎたい場面ではAモード(α7SにはSS低速限界設定がない)からSモードに切り替えるというのが、現状実施している唯一の対応策です。当然ISOは高くなりますが、そこはα7Sの高感度耐性を信頼して...。でも...、手振れ補正付きのボディが欲しくなるなー。→買いました。α7RII
以上、ご参考になれば幸いです。
参考になるサイト
最後に、本レンズについて参考になるサイトを載せておきます。
- 公式サイト
- Flickrグループ
- マップカメラレビュー
- Sonyalpha.blogレビュー
- ジェトダイスケさんの動画
- フォトヨドバシレビュー
こちらもどうぞ